ヨコ子/結婚には焦ってないと言いはるアラサー女子
アンナ/社会人のタマゴで22歳。夢と希望にあふれているらしい
ヨコ子:カリスマ店員を発見しました。
アンナ:えっ!イケメンですか?どこですか?誰ですか?
ヨコ子:ドードードー。おばさまです。中央区は南3条西9丁目にある、鉄鍋うどん 詩仙洞(ルビ=しせんどう)というお店です。
アンナ:おばさまか・・・。そして鉄鍋うどん・・・。鍋焼きうどんではないんですね。初めて聞いたけど、熱そう?。
ヨコ子:本棚やら猫の写真やらでいっぱいの店内に、各テーブルには山盛りの卵。一瞬「え、誰かの家に来ちゃった?」と、戻ってのれんを再確認したくなる“家感”。
アンナ:わーほんとだ。おばあちゃんの家みたいなアットホーム感ですね。
ヨコ子:そして、独特のワールドをびんびんに感じているところに、浮世離れした風情のおばさまが出迎えてくれ、「時間かかるよ。大丈夫?煮込むからね」って。
アンナ:すでにタダものじゃないオーラが出てますね。
ヨコ子:しかも、メニューもなく聞くそぶりもなく、あたりを見回すと、食べているのはみんな黒い鉄鍋に入ったうどんで、メニューは、鉄鍋うどん(800円)一品のみなんだって。
アンナ:一食入魂なんですね。
ヨコ子:常連客と思われる人も多くて、たくさんの食器に埋もれながらうどんを食べていたおじさんは、おばさまに命じられて外から三つ葉入りの箱を運ばされていたり。おばさまと会話を楽しんでいた母娘がいたんだけど、食べ終わったら「ごちそうさま?」って言いながら、おばさまを通り過ぎて出口へ・・・。
アンナ:えっ!無銭飲食!?
ヨコ子:いや、ツケなのかな、って思ったら、なんと会計がおみくじ方式。入口に置いてあるビンに千円札2枚をさして、箱からいくらかのダラ銭を「ごちそうさまー」ってお釣りとしてもらって帰って行ったよ。
アンナ:あーそういうことですか。全面的に、人を信用したシステムですね。なんか、名前からして仙人っぽい感じだし。
ヨコ子:そうかも。なんか飲食店というよりは、お寺とか集会所の雰囲気。囲炉裏を囲みながら、うどんを食べ食べ語り明かしたい。
アンナ: 囲炉裏があるんですか!?
ヨコ子:いや、ないけど。
アンナ:・・・・・・。私も似たようなアットホームな店には行ったことありますけど、あんまりさっきのお客さんたちみたいに、お店の人と話せないんですよね。どうも、気後れして曖昧な返事をしてしまいがちです。
ヨコ子:それが年を取るにつれて話せるようになるんだよねえ。なんでだろう。恥じらいがなくなるのかしら。
アンナ:人って、特に女性は、段々と積極的になっていきますよね。
ヨコ子:そして、30分くらいたって運ばれてきた鉄鍋うどんは、煮えたぎってグラグラ。
「卵は2個入っているけど、好きなだけそこから取っていいよ」とテーブル上の山盛り卵を指すおばさま。さすがにそんな食べれません。
アンナ:卵の食べ放題って聞いたことない。
ヨコ子:上に載った三つ葉のシャキシャキ食感と、シコシコのうどん。そして、、甘みのあるゴボウがおいしかった。
「アタシは旭川出身だから・・・」、「その麺は探し回った・・・」とか、腰を下ろしたおばさまの語りを聞きながら、汗をかいてうどんを食べるという。そして、すっかり雰囲気に圧倒されて料理の写真を撮るのを忘れてしまったので、画は想像におまかせします・・・。
アンナ:だめじゃないですか。この写真じゃ、料理が見えませんよ?。食べに行って実物を確かめるしかないってことですか。
ヨコ子:ぜひ行ってみて。知る人ぞ知る名物店主らしいから。これを、カリスマと言わずして何と言おうぞ!マイペースなんていう言葉じゃ語れないよ。歌人であり、エッセイや小説も人気の穂村弘の言葉を借りれば、“現実圧に負けない“強さ。
アンナ:は?なんですか現実圧って。
ヨコ子:人ってさ、大抵なにか人に見られながらすることって焦ったりするじゃない。
アンナ:そうですね。よく人に見られながら料理をしたりすると、焦って失敗したりしますよね(涙)。
ヨコ子:会計をしてお釣りをもらって財布に入れるまでのあのもどかしさが嫌で、穂村氏はポケットのあちこちに入れてなくすらしい。たとえ、「遅い」と言われても、自分の仕事を全うする強さを持っているのが現実圧に勝つことだから、正におばさまは勝利し続ける人。ファンになりました。人生相談をしてみたい。
アンナ:さっきの話じゃないですけど、年齢と気質なんですかね?。しかし、占いとか人生相談とか、好きですね・・・。
ヨコ子:なんでも、夏場でも変わらず鉄鍋うどんを出し続けるそうなので、今後も追跡報告します!
アンナ:今度は写真撮ってきてくださいね。