三連休、いかがお過ごしでしたでしょうか。
北海道は雪が降り、私の住む街はすでに真っ白に包まれています。
そんな中アクティブに動こうとも思わず、あいかわらず本を読みふけっていました。
何冊か読んだのですが、なかでも強烈な印象だったのがコチラ。
「こどもの一生」(中島らも著 集英社文庫)
小説家であり、戯曲家であり、コピーライターでもある故・中島らも氏。
氏が舞台の脚本として書いたものをノベライズ化したものです。
舞台は瀬戸内海に浮かぶ小さな島。そこにはMMMというクリニックがあり一風変わったカウンセリングを行っている。
島にカウンセリングを受けにきたのは男女合わせて5人。「こども返り」という、薬物と催眠によるストレス治療法により、その5人は10歳に戻され、その施設で1週間を過ごす・・・
ここまで書くと、ちょっと不気味なミステリーかオカルトものか、といった雰囲気。「外部との接触が一切取れない孤島」という設定はミステリーの定番中の定番です(「クローズドサークル」と言います)。
しかし、この作品はミステリーではありません。れっきとしたホラーです。
会話はとてもわかりやすく(何しろ大半は10歳に戻った“こども”の会話なので)、コミカルさが多い。それ故に中盤までは、まったりと読みすすめることができます。
しかし、ある瞬間を境に話は一変します。クリニック内は慄然とし、読んでいるこちらをも恐怖の渦に巻き込んでいくのです。
ジャンルとしては、ホラーやサスペンスになるこの作品。しかし一番怖いと感じたのは「こども社会の残酷さ」でした。
大人の社会のストレスから解き放たれるために10歳に戻っているはずなのに、こどもの社会にも嫌悪や派閥が生まれる。
しかも、こどもには「これをやったらいけない」という理性のタガが緩い(なかには理性で制御できない人物もいます)ため、自然な流れで「いじめ」が発生します。そのいじめ方たるや、血が流れる暴力よりも残酷。精神的に1人を追いつめていくのです。たった5人しか「こども」はいないのに。
正直、読み終わった瞬間は「読むんじゃなかった!」と思いました。
でも、その10分後には「もう一度読みたい・・・」に変わっていました。
怖いけれどまた読みたい、という妙に惹き付けられる癖ある魅力と、「なぜだ!」と思わせる疑問が散りばめられた作品でした。
病院が舞台と言えど、平易な言葉で書かれているので深い知識は必要ありません。刺激が欲しい方におすすめします。
読み終わると、表紙すら怖くなってきますよ・・・