ヨコ子/結婚には焦ってないと言いはるアラサー女子
アンナ/社会人のタマゴで22歳。夢と希望にあふれているらしい
ヨコ子:今さらになって、田辺聖子のすごさがわかりはじめた私です。
アンナ:あ、女流作家の。でも、読んだことないです。
ヨコ子:まああ!
田なべえ、とあえて親愛の情をこめてそう呼ばせてもらうけど、私のイメージではもう80過ぎのおばあちゃんだしさ、小説も保守的なイメージを勝手に抱いていたんだけど、たまたま真剣に読んでみたら全然違った。
アンナ:どんな感じなんですか?
ヨコ子::小説には、当時では“ハイミス”と呼ばれる主人公がよく登場するんだけど、いわば今のアラサ―女子が主人公でさ。仕事バリバリ恋愛バリバリ、みんな自分に正直に生きていて、もっと自由でいいんだ!と元気が湧いてくるんだよねー。あんなフツウの日常を描いているのにおもしろくてしみじみ味わい深い。さすが田なべえだわあ。あの主人公と今の自分をいろいろ重ねてさあ、あたしももっとこうズバビボベット
アンナ:ちょ、ちょっとヨコ子さん、字が大きくなりすぎてません?力入りすぎですよ。
林真理子みたいな感じ?アラサ―として、自分と重ねながら読んでいるんですね。
ヨコ子:ふふん。まだ、キミにはわかるまい。
アンナ:たぶん、理解はできるけど同調はできないかもしれないですねー。
アラサ―女子って生きにくそうで…。
ヨコ子:なぬう?それは言いすぎなんじゃ。昨今のアラサ―ブームなのかわからないけど、田辺聖子の小説が続々復刊されたり、映画化されたり。復刊本のキャッチコピーは、「時代が田辺聖子に追いついた」。
フツ―だけど、ええまさに!
1970年代であの内容ってすごいぜ。どうかしてるぜ!
アンナ:田辺さんが50歳のときの作品となると、きっとまだいわゆる。
“職業婦人”なんて人は少なくて、生きづらいところもあったんでしょうねー。
ヨコ子:あら・・・わかってんじゃないの。びっくりした。
そんな新旧の女性たちに勇気を与える田辺聖子の小説を読みながら、「てこな」でうどんをすするのが、最近の幸せ。小さなビルのせまーい階段を上った2階にある穴場だから、劇的に混むことはないし、椅子とか飾っているアイテムの昭和っぽさが落ち着いて、読書がすすむすすむ。
アンナ:私もランチ中に読書しますよー。SFとか推理小説中心ですけど。
頭がリフレッシュされて良いですよね。午後からの仕事もはかどります。
ヨコ子:へえー(ほんとはかどってんの?)。そして、カウンターの端っこが私の特等席。さ、メニューを開こうかな、って思うけれど、てこなにメニュー表はございませんが、そこはどのメニューも700円均一なのでご安心を。
常に、魚定食、讃岐うどんがレギュラーメニューであって、その他のメニュー1品がいろいろなうどんに替わります。
アンナ:メニューがないんですか!?なんかドキドキするなあー。置けばいいのに。
ヨコ子:ま、そこはお客とのコミュニケーションを大事にしているってことで・・・。
私はいつも、讃岐うどんを頼んじゃう。そして、料理が来るまで、田辺聖子の世界にひたるの・・・。
アンナ:そこまでひたってるとうどんがのびますよ。味はどうなんですか?
ヨコ子:アッツアツの讃岐うどんは、まさにお袋の味。湯気に包まれるだけで、なんだか泣きそうになります。人に作ってもらう食事っておいしいよね…。
ニラにシイタケ、ネギ、刻み昆布、豚肉、というたっぷりの具材もうれしい。
アンナ:昼間から怖いから、泣かないでくださいね。
うどんは、かなり普通なんですねー。
ヨコ子:そうだね…。小鉢は、今回はほうれん草を納豆で和えたものでした。
食後はコーヒーが出ます。これ、お茶だったらサイコー。
でもね・・・ズバリ、ココに目新しさはない!でも通いたくなる味と雰囲気なのです。
アンナ:ああ・・・結局スタンダードって強いんだと思います。癒されるし。
ヨコ子:チチチチチチチチチチ…
アンナ:何すか!突然!
ヨコ子:小鳥のさえずりだよ。お店にBGMとしてずっと流れているの。
ここは、小鳥の広場(さっぽろ地下街)か、楽園か・・・?
アンナ:ああびっくりした(汗)。驚かさないでくださいよ。
ヨコ子:めずらしいよね。やっぱり、癒しの空間を目指しているのでしょう。
アンナ:でも、それならクラシックとか、ヒーリングミュージックでいいんじゃ・・・。
謎ですね。
ヨコ子:そうして、微妙に癒されつつ食後のコーヒーを飲み、田辺べえにしばしひたって、たっぷり鋭気を養ったあと、女はコンクリートジャングルに帰っていくのだった。
アンナ:田辺べえになってますし。だったって・・・。なんで、小説風に幕を閉じてるんですか。
私も、アラサ―予備軍として社会勉強のために行ってみるとします―♪
ヨコ子:じゃあ、今度田辺べえを貸してあげよう。
アンナ:田辺聖子がいいです。